袋耳ともいいます。耳介(一般に言う耳のことです)の上半が側頭部の皮膚に埋もれ込んだ状態をいいます。指でつまんで引っ張り上げることができますが、指をはなすと元に戻ってしまいます。埋もれている部分の軟骨には頭側に折れ畳まれたような変形があります。片側性のことも両側性のこともあります。片側例では、よくみると反対側の耳介上半にも同様の変形があることがあります。
発生頻度は出生比0.25%前後とされ比較的多い疾患といえます。発生原因としては耳介後面の筋肉の異常によるとする説が有力です。耳介の後面にいくつかの内耳介筋といわれる筋肉があります。イヌなどで遠くの音を聞く時に耳介を立てることができますが、まさにその筋肉の作用によるものです。ヒトではほとんど退化していますが、耳介の形状維持に関与しているされ、これらの筋肉の異常により変形を生じるとするものです。
耳介の上半部のみの変形なので、聴力への心配はいりません。問題点としては機能的なものと整容的なものに分かれます。機能的には耳介上半が埋もれているとマスクのゴムや眼鏡のツルなどがかけられないため、学校での活動、学業に支障をきたすことが考えられます。整容的とはかたちの問題ですが、日本では耳介の形状には比較的に寛容なために、それほど深刻にならなくてもよいかもしれません。
母斑とは、皮膚に生じる腫瘍のひとつです。一般的には「あざ」として知られていますが、「あざ」にもいくつかの種類があり、その特徴や治療法が異なります。皮膚の異常な色調を特徴とする「あざ」もあれば、隆起した「あざ」もあります。また「あざ」だけでなくいくつかの合併症を伴うものを母斑症といいますが、これにもいくつかの種類があります。
具体的には下記のようなものが代表として挙げられます。
色素性母斑 | 母斑症 | 神経皮膚黒色症 | 脂線母斑 |
表皮母斑 | 扁平母斑 | 太田母斑 | 異所性蒙古斑 |
血管腫 | 血管奇形 | リンパ管腫 | 神経線維腫症 |
治療方法に関しては、あざの種類のより異なってきます。必要に応じて、手術やレーザー治療、あるいは血管内治療といったものを組み合わせて治療をおこないます。また複数回の治療が必要になることもあります。それぞれの治療の詳細は、各論で解説いたします。
形成外科では見た目に配慮した治療を心がけております。
単なる「あざ」が皮膚にできているだけでなく、皮膚をはじめとして複数の器官に生じていたり、別の病気を合併するものを母斑症といいます。多くは遺伝的な要因が強いですが、ご家族に同じ疾患がなくても出る場合もあります。
母斑症の代表でいずれも小児慢性特定疾病とされているスタージ・ウェーバー症候群とポイツ・イエーガース症候群について解説します。
多くは平坦な赤い「あざ」(毛細血管奇形)と、緑内障、脳の軟膜という部分の石灰化、けいれん発作を合併します。顔面に赤あざがある方がすべてこの母斑症ではありません。特に三叉神経第一枝領域とよばれる部分(主に頭部、おでこまで)に血管腫がある場合に合併率が高いといわれています。
治療は血管腫治療用レーザーを照射します。保険適応ですが3ヶ月に一度の制限があります。繰り返し照射していきますが効果には限界があります。緑内障、痙攣発作は眼科、神経内科などで対応します。痙攣発作がなくても気になる場合は頭部CTや眼科受診を行います。
乳児期から唇、口のなか、指のさきなどに1~5mmほどの色素斑が認められます。そして食道以外の消化管にポリープが合併します。
小さい頃はポリープ自体の癌化リスクは低いが、ポリープが大きくなると出血による黒色便・血便になったり、貧血がおきます。また腸重積による腹痛・嘔吐を認めるために、こうしたことをきっかけに診断されることもあります。
ほくろの治療に関しては色素性母斑のところで述べているような外科的切除、レーザー治療などがあります。消化器疾患に関しては、子供の頃であれば小児外科、成人した場合には消化器内科や消化器外科で対応します。
いずれの母斑症も形成外科のみならず、他科との連携が重要です。
茶色のあざが皮膚に出来る病気です。茶アザは、皮膚の色をつくるメラニンが皮膚の浅いところに増えて出来ます。(図1)。ほくろのように皮膚から盛り上がることはありません。そのために盛り上がりの無いあざと言う意味で扁平母斑と呼ばれています。また、コーヒーの様な黒さでなく、ミルクコーヒーに似た色のあざでカフェオレ班とも呼ばれます。通常は茶色のあざですが、茶色のアザの中に直径1mm程度の小さな黒い点が混在することもあります。
ほとんど、生まれつきに存在しますが、思春期になって発生する場合もあります(遅発性扁平母斑)。思春期になって発生する場合には毛が同時に生えてくる場合が多くあります。肩に出来た発毛性の遅発性扁平母斑はベッカー母斑と呼ばれています。
先天性、遅発性の扁平母斑とも、悪性化することは、通常ありません。
扁平母斑は悪性化することは、まずありません。そのために、治療の中心は見た目を良くすることにあります。30年前の治療はドライアイスや液体窒素を使用した治療が中心でした。扁平母斑の方がみえたら、まずその一部にドライアイス治療を行い、効き目がありきれいになることを確かめてから本格的治療を開始していました。ドライアイス治療を行うと、一時的にきれいになりますが、半年ぐらい経過すると茶色が再発してくる場合が多々あります。そのため、テスト治療を行ってから、半年待ってきれいになる方だけに治療をしていました。効果が無い方で、小さな扁平母斑の場合には、手術を行っていました。
レーザーが登場して、扁平母斑の治療は様変わりしました。扁平母斑の治療は、まずレーザー治療から始めます。レーザーの長所は治療を行った部位に、キズが出来難いことです。そのため、医師、患者とも安心して治療が行われます。扁平母斑に使用されるレーザーはルビーレーザー、Qスイッチ付きルビーレーザーです。扁平母斑の方が見えたら、まずレーザー治療を行い、有効である方は、治るまで治療を行います。1~2回のレーザー治療を行い、扁平母斑が直ぐに再発する場合には、ドライアイス治療あるいは手術療法を考慮します。
残念ながら全ての方にレーザーが有効ではありません。思春期になって発生する遅発性扁平母斑では、多くの方に効果を認めます。先天性の扁平母斑では、成人の場合でレーザーが効くのは稀で、再発を高率に認めます。しかし、小児にレーザー治療を行うと、効果を認めることが多くなります。そのため、有効率を高めるために、皮膚が薄い0歳児からレーザー治療を行う病院が増えてきました。生まれつきあざがある場合には、早めに専門医に相談することをお勧めします。
いわゆる青あざと呼ばれます。青あざは色素細胞(メラノサイト)が皮膚の深いところ(真皮)に集まって出来るアザで、生まれつき又は生まれて間もなく出来るものや思春期以降の大人になってから出来るものがあります。
生まれつきの青あざの代表が蒙古斑です。蒙古斑は生後1週から1ヶ月ころまでに、青いシミがお尻や背中の下部にみられるもので、胎生期の真皮メラノサイトの残存と考えられています。日本人にはほぼ100パーセントにみられ誰でも知っている「あざ」のひとつですが、5,6歳までに自然に消失しさほど問題にはなりません。ところがまれに通常の部位以外にも蒙古斑がみられることがあり、これを異所性蒙古斑といいます。
思春期以降の大人になってからできるものの代表が太田母斑です。太田母斑は目の周りや頬を中心とした片側顔面にできます。思春期以降の女性に多いのが特徴ですが、乳児期から濃くなっていくものや両側に出来るものもあります。また、肩の周りにできる同じ様なアザは伊藤母斑と呼ばれます。
お尻や背中に見られる蒙古斑は通常5,6歳までに自然に消失しさほど問題にはなりません。異所性蒙古斑といえども、動揺にその大半は学童期までに消失することが多く、蒙古斑同様治療の必要はありませんが、なかには青いシミが学童期になっても残る場合があります。
しかしその大半は成人までに消えることが多く、放置しておいても結構ですが、衣服に隠れない露出部などは患者の精神的苦痛を緩和するために治療の対象になることもあります。
太田母斑や伊藤母斑のような後天性の場合には、自然に消退することはありません。
基本的な治療としてはQスイッチレーザー照射を行います。現在臨床にはQスイッチルビーレーザー、ヤグレーザー、アレキサンドライトレーザーなどが用いられ、レーザーの種類により多少の経過の違いや治療回数の違いが見られます。
いずれのレーザー治療にしろ治療中は痛みを伴うため、幼少時の治療には全身麻酔を要し、そのため入院が必要なこともあります。
また治療には健康保険が適応となりますが、レーザーの種類や適応となる限度があります。そのため、それを超えるものに関しては保険適応外の治療となることもあります。詳しくは形成外科担当医にご相談ください。
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